岩間賢さん(右から2人目)と写真や資料を整理する旧月出小学校の卒業生ら。2013 |
「あの家の母親だべ」「どれがよ」―。
千葉県市原市南部の山あいにある旧月出(つきで)小学校。
体育館の床に並べられた古い集合写真をのぞき込むのは、卒業生たちだ。全員が60歳以上。
同校は6年前、過疎化のため児童が減り廃校になった。
市原市は、来年3~5月「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」を開く。
テーマは過疎問題の解決。
旧月出小のような廃校や里山を舞台に、住民が有名アーティストと多彩な作品やプロジェクトを展開する計画で、卒業生らが集まったのも準備のためだ。
北部は臨海コンビナートが広がり、人口約28万人の都市に発展した同市だが、山がちの南部は過疎化が進む。
手入れがままならない里山の荒廃も課題で、都市と地方の両方の顔を持ち、現代日本の縮図ともいわれる。
同市月出の関光成(せき・みつなり)・町会長(63)は、地区の大半が高齢世帯という。「このままじゃ寂しい。
年は取ったが、漬物やみそ造り、力仕事もできる。
新たな試みに挑みたい」と、活性化や定住者の増加などを目指す芸術祭に期待を掛ける。
旧月出小では、中国在住の建築・環境アーティスト、岩間賢(いわま・けん)さん(39)が、改装してカフェや工房を開く。
卒業生らにお願いしたのは、校舎に残る古い写真など資料の整理。
思い出の詰まった印画紙は、アートの素材に生まれ変わる予定だ。
「過疎は"負"ではない。
では満員電車に揺られる都市住民は幸せか。
東日本大震災以降、既存の価値観は崩れたはず」。
岩間さんは指摘する。
芸術家と住民の力で、廃校をアトリエやものづくりの場に変え「月出から市原ブランドを発信していきたい」と、力を込めた。
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