透き通った音色で魅了する筒井孝司さんの演奏会 |
何の変哲もない、普段使いの茶わんが木琴用のマレット(ばち)ではじかれ、優しい響きを奏でる。
大小さまざまな磁器が織りなす澄んだメロディーに、聞き入るお年寄りの表情もほっと和んだ。
日本で初めて磁器が焼かれた佐賀県有田町。
2016年に創業400年を迎える有田焼の歴史と伝統技術を「音」で全国に伝えようと、演奏されているのが茶わんを使った「碗琴(わんきん)」。
1300度の高温で焼かれた磁器はレースを巻いたマレットではじいても割れない。
中心となって活躍するのが有田観光協会事務局長の筒井孝司(つつい・たかし)さん(62)。
02年から演奏会を続けている。
姉妹都市を結んでいる西洋磁器発祥の地・ドイツのマイセン市を訪れた際、街中に「音」があふれていたことに触発され、昭和20~30年代に余興で楽しまれていた「お茶わん演奏」の復活を思い立った。
当時使われていた茶わん14個を譲り受けた。
さらに、何千もの有田焼の中から、オリジナルにはなかった半音を出せる茶わんを探し出し、現在は31個で2オクターブ半の音階を奏でる。
地元の民謡から童謡、クラシックまで多彩なレパートリーを誇る演奏会は国内外で約400回を数えた。
筒井さんの活動に触発され、古田秀之(ふるた・ひでゆき)さん(44)ら4人によるアンサンブル「有田碗琴楽会(ありたわんきんがっかい)」も生まれた。
テーブルに茶わんをそのまま並べる筒井さんのスタイルに対し、楽会は固定した茶わん25個(2オクターブ分)を、鐘をたたくように演奏するのが特徴だ。
「音を通じて有田焼に興味を持ってもらいたい」―。
互いに個性を競いながらも、碗琴にかける情熱は同じだ。
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有田焼には「めおとし」と呼ばれる検品方法がある。
焼き上がった品を一つ一つはじいて、音の響きでよく焼けているか、ひびが入っていないかを判断する。
有田焼のいい音は、1300度の高温で完璧に焼き上げた技術の証しといえる。
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