デービッド・アトキンソン氏「おもてなしは自画自賛」
強いまち・データは語る(3)インタビュー
2015/2/26 Nikkei、2015/02/26、一部編集
訪日外国人が過去最高の1300万人に――。関係者が浮かれる数字を冷ややかな目で見るのは、元ゴールドマン・サックスのアナリスト、デービッド・アトキンソン氏(49)だ。
今は文化財の修復を手掛ける小西美術工芸社(東京・港)の社長を務める同氏は、「『日本のおもてなし』がすごいといっても、海外のサービスと客観的な評価をしたわけじゃない。
自分で自分を評価しているうちは自画自賛にすぎない」と手厳しい。
――14年の訪日外国人が過去最高を記録しました。
「日本の観光客数は香港やマカオを下回っており、もともと人が行っていないところに人が行くようになったというだけのことだ。それに観光客数を自慢しても、実際に金を落としているのかを見ないと意味がない。1泊2日で安いホテルに泊まり、日本が輸入したブランド品を買う外国人ばかりきてもしょうがない」
――長期滞在して、お金を落としてくれる外国人はどうしたら来てくれるでしょう。
「『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』という本に書いたことだが、いろんな選択肢があるからいろんな人が来る。今は金がなくて、感動しやすい人を呼んでいるだけ。
ピラミッドからベルサイユまで見たことがある人が日本に来ても、神社仏閣はぼろぼろで外国語の解説もついてない。(!!)
神社仏閣が建っているだけなら、行く必要はない。結局は魅力を高めるための投資をしないといけない」
――日本のおもてなしにも疑問を持っているそうですね。
「世界の人々の価値観はみんな違う。日本人はおもてなしの価値観はすばらしいと言っても、世界の国々のおもてなしと客観的な評価をしたデータはない。京都は世界一の観光都市と言うが、観光客数は決して世界一じゃない。サッカーのワールドカップで予選落ちしているのに世界一だと言っているようなものだ」
――観光産業にしっかり投資すれば、日本のGDPを38兆円押し上げられるというのが持論ですね。
「今はもともと日本が好きな人や、理解を示したい人が来ているだけだ。
何十億という世界の人たちが納得するためには、一言じゃいえない努力が要る。
けれど、むかし日本に外食産業がなかったことを考えればいい。
政府が旗を振ったわけでもないのに、いつの間にか外食は巨大な産業になった。
いろんな人が自分なりに投資して努力したからだ」
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