『こんなにも深い 埼玉と韓国・朝鮮の歴史』
出典、一部抜粋編集、埼玉新聞、2015年2月24日
県内の公立高校の元教諭と現役教諭5人が共同執筆し、古代から現代までの埼玉と朝鮮半島との関わりをたどった「こんなにも深い 埼玉と韓国・朝鮮の歴史」を出版した。
朝鮮半島の国家「高句麗(こうくり)」から渡来した人たちによって開拓された高麗郡(現在の日高市、飯能市など)が2016年に建郡1300年を迎える中、埼玉と朝鮮半島の関係を知る格好の一冊だ。
執筆者で元さいたま市立大宮北高教諭の江藤善章さんは「海のない埼玉と朝鮮半島が古代から多彩な関係にあり、実に面白い」と話している。
執筆者がそれぞれフィールドワークを重ねてまとめた。古代では「高麗郡」「幡羅(はたら)郡」(深谷市、熊谷市)を中心に紹介し、渡来人と埼玉の関わりの深さを解説している。
近世では江戸時代に、朝鮮王朝が派遣した外交使節「朝鮮通信使」に焦点を当てた。川越、加須市などには、朝鮮通信使を描いた絵馬があることや白岡市の神社に朝鮮通信使の書が扁額として飾られていることが紹介されている。
近代・戦後では1923(大正12)年の関東大震災発生時に県内で起きた朝鮮人虐殺、太平洋戦争時に吉見百穴の地下軍需工場で働いていた朝鮮の人たち、指紋押なつ拒否運動、北朝鮮による日本人拉致などについて記した。
高麗郡長の高麗王若光(じゃっこう)を祀った高麗神社は、参拝した若槻礼次郎や浜口雄幸が後に総理大臣になったことから出世明神と呼ばれたことや、東松山市の「みそだれのやきとり」と朝鮮の人たちとの関係と、文化的側面にも触れている。
また、元県立越谷西高教諭の宮内正勝さんがコラムで両者の関係を紹介している。
江藤さんたちは92年に「くらしの中から考える―埼玉と朝鮮」、02年に日韓対訳本「埼玉とコリア」を出版するなど、埼玉と朝鮮半島の関係を知ってもらう活動を続けている。今回は考古学研究の成果を加え、活動の集大成としてまとめた。
執筆者の元県立越ケ谷高教諭の小川満さんは「嫌韓本の影響などで、韓国をイメージで『嫌い』という人もいる。まずは、埼玉と朝鮮半島との地域の歴史を知ってほしい」と話す。
定価1500円。問い合わせは、新幹社(03・5341・4750)へ。
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